帯電防止フィルムとは? 原理や特徴、用途を解説
予期しないトラブルや事故は、静電気の発生と影響によって起こる場合があります。 静電気トラブル発生を未然に防ぐためには、帯電防止フィルムの使用が有効です。 本記事では、帯電防止フィルムの原理や特徴、用途を紹介します。

帯電防止フィルムは大切な商品を守る素材
静電気の発生や帯電は、商品の汚れや機械の破損などを引き起こす恐れがあるため、商品保護や帯電予防のためにあらかじめ対策を立てることが重要です。
具体的な静電気トラブルとしては、電子部品の破損や誤動作に加えて、ほこりやゴミの付着による商品品質の低下や、粉塵爆発の引火源となる可能性が挙げられます。
通電性や帯電防止性などの性質を付与させた、帯電防止用の包装や保護材である帯電防止フィルムの使用は、製品や機械などの静電気トラブル予防に有効です。
静電気発生のメカニズム
静電気は、物体の持つ電荷が釣り合わないときに起こりやすい現象です。
ここでは、静電気発生の仕組みやその対策方法について紹介します。
静電気が生まれる仕組み
静電気は、物体の持つ正と負の電荷が、なんらかの影響によって均衡を崩した際に発生します。不均衡な状態となる原因のひとつは、物体同士の「接触」と「剥離」です。
2つの物体が接触したときに電荷の移動が起こり、それぞれの物体が正か負の電荷どちらかに偏ったまま物体が離れ、物体上に静電気が発生することを「剥離帯電」と呼びます。また、静電気発生には、2つの物体を擦り合わせた摩擦で発生する「摩擦帯電」もあります。摩擦帯電が起こる原因は、剥離帯電の繰り返しです。
静電気は、接触する物体の帯電しやすさによって、程度が変わります。具体的には正(プラス)に帯電しやすい素材(木綿・羊毛・人毛など)と、負(マイナス)に帯電しやすい素材(ポリエチレン・ポリエステル・セルロースなど)とを、低湿度下で摩擦すると、前者から後者へ多くの電荷が移動し、両者は強い静電気を帯びます。
静電気への対策
前述の通り、静電気発生はトラブルにつながるため、対策を立てることが重要です。
対策の方法としては、そもそも物体が電荷の不均衡を作らないように、非帯電性を付与することによる予防が可能です。非帯電性の付与には、取り扱い環境の湿度調整や、除電装置の使用などによって、静電気を除去する方法があります。
また、生じた静電気を素早く逃すために導電性を上げる方法もあり、それぞれの有効な場面は状況によって異なります。
非帯電性が与える効果の持続時間は、使用する方法や素材によって変化するため、適切な帯電防止策を見極めることが大切です。
静電気のトラブル事例
目に見えない静電気は、対策を怠ったり放置することで、大きなトラブルにつながる可能性があります。
ここでは、静電気のトラブル事例を紹介します。
放電
静電気が発生した後、なんらかの衝撃で負の電荷が放出され、正に帯電した側に戻ろうとする作用が「放電」です。静電気放電が人体で発生すると、不快感や痛みを伴うことで、作業や仕事のモチベーション低下につながる可能性があります。
静電気の電圧は一定ではないため、環境によっては家庭用電源の電圧よりも高電圧になります。静電気自体が人命に関わることはありませんが、放電が作業現場や機械の密集した場所などで起こると、怪我や火災、事故の原因となることを知っておくことが大切です。
電子部品の破壊
電子部品は、帯電した人体や物質との接触によって、破損する恐れがあります。そのため、人が電子機器に触れる際には、放電させるアイテムを用いることがおすすめです。導電シューズや導電床材などの活用で、帯電を解消するための環境を作り、静電気の発生を防げます。
帯電しそうな文房具や服などを避け、帯電防止用リストストラップや静電気対策グッズを使用することも大切です。
異物の付着
人や物が帯電すると、ほこりやゴミが付着しやすくなります。ほこりやゴミの付着は、汚れの原因となるだけでなく、製造工程中のトラブル発生にもつながります。特に、半導体部品や液晶の製造現場では、静電気による小さなほこりやゴミの付着は御法度です。
精密機械や半導体、食品・医薬品関係などの製造現場で作業をする際は、人体や物体に帯電させない工夫を施して、ほこりやゴミの付着リスクを減らしましょう。
印刷トラブル
静電気の発生が、印刷トラブルに関わることもあります。印刷紙の帯電は、印刷機への紙詰まりなど動作不良を起こす原因のひとつです。さらに印刷紙が帯電すると、ほこりやゴミを引き寄せやすくなることに加えて、紙面上の撥ねやにじみなどインキの挙動にも影響を与え、印刷物の品質を低下させる原因になります。
そのため印刷現場では、室内の加湿や除電装置の設置など、さまざまな静電気対策が実施されています。
帯電防止とは
静電気は、怪我や事故などのトラブルにつながる可能性があり、できるだけ発生を防ぐことが大切です。帯電防止とは、予見される静電気の発生を予防することです。
ここでは、帯電防止の考え方について紹介します。
帯電防止の考え方
帯電防止策として、そもそも物体に静電気を発生させないために、機械や製品に帯電しにくい非帯電性素材を使用する方法があります。例えばプラスチック製品は、絶縁性の高さから表面の静電気を除去しにくいため、非帯電性素材をあらかじめ付与することで、帯電を防止します。
もし非帯電性素材の使用が困難であれば、導電性を高めて、発生した電荷(静電気)を積極的に物体外に逃がすこともひとつの方法です。ICや半導体などの静電気による破損が心配される製品には、導電性の高いパッケージによる梱包が不可欠です。
帯電防止フィルムとは
帯電防止に重要なことは、偏った電荷をあらかじめ発生しにくくすることです。
帯電防止フィルムとは、本来は電荷(静電気)を帯びやすい樹脂フィルムの内部に非帯電性素材を含有させたり、樹脂フィルムの表面に非帯電性素材の膜を設けたりしたものです。
後者の具体例として、非帯電性素材に界面活性剤を用い、樹脂フィルムの表面に界面活性剤の薄い膜を設ける方法が挙げられます。界面活性剤は大気中の水分との仲立ちとなり、樹脂フィルムの電荷を大気中に放出することで、偏った電荷の滞留を解消する仕組みです。
この方法は、大気中の水分が少ない冬場や、結露により界面活性剤が失活した状況下では、帯電防止効果が十分に得られない可能性があります。帯電防止効果を永久に持続させるためには、専用の処理が重要です。
帯電防止フィルムの種類と選び方
静電気の発生に因るトラブルを回避するためには、帯電防止フィルムの使用がおすすめです。帯電防止フィルムにはさまざまな種類が市販されています。対象物と目的に応じたフィルムの選択が重要であるため、内容をしっかり確認して選定しましょう。
ここでは、帯電防止フィルムの種類と選び方を紹介します。
帯電防止フィルム
一般的に帯電防止フィルムと呼ばれる商品は、表面抵抗率が10の12乗Ω程度のフィルムが多く、帯電を積極的に防止するものではありません。これら多くの帯電防止フィルムは、帯電防止効果を湿度に依存した商品です。また、同フィルムの帯電防止効果は、長期保存によって減少する可能性があります。
一方で、このような帯電防止フィルムは比較的安価な商品であるため、使用までの期間が短い製品によく使用されています。
永久帯電防止フィルム
永久帯電防止フィルムは、表面抵抗率が10の10乗Ω程度のフィルムです。帯電防止フィルムと異なり、帯電防止効果が湿度に依存しない特徴を持ちます。永久帯電防止フィルムは、フィルム自体に特殊な帯電防止加工を施すため、帯電防止効果を半永久的に持続できる点がメリットです。帯電防止フィルムと比べると価格は上がる一方、導電性フィルムよりは安価です。
永久帯電防止フィルムは、帯電防止効果の高さから、一部の電子部品の梱包にも使用されます。
導電性フィルム
導電性フィルムは、表面抵抗率が10の4から7乗Ω程度のフィルムで、金属や導電性のあるポリマーを使ったフィルムです。抵抗値が非常に低いため、帯電してもその状態は長く続かず、静電気を素早く逃がし、ほこりやゴミの付着を防ぎます。
加えて、静電気による製品への悪影響やトラブルを緩和できるため、特に電子部品や半導体デバイスなどの高度な電子機器の梱包に使用されます。
帯電性が低く張り付きにくい素材「ユポ」
ユポ・コーポレーションで製造販売しているフィルム素材のユポは、丈夫で長持ちすることに加え、帯電性が低く静電気による張り付きにくさを特徴とする素材です。梱包用包装やラベル、型紙などに使用しても、静電気トラブルを生じにくいメリットがあります。
静電気トラブルが起こりにくいことから、製品破損や汚れのリスクを減らし、コスト削減や検査工程の省力化に寄与します。帯電性の低さは、衛生面における信頼の高さにもつながり、医療や食品など、幅広い分野の製品に使用可能です。
まとめ
帯電防止フィルムの原理や特徴、用途について紹介しました。
静電気が発生し帯電すると、製品や作業員、製造機械などへのトラブルが発生し、大きな損失となる可能性があります。
帯電防止のためには、帯電防止グッズを使用して静電気の発生を防ぐことや、発生した静電気を導電性フィルムによって速やかに除去することが大切です。
ユポは帯電しにくい性質を持ち、帯電防止対策のリスクとコストの削減に貢献します。ご興味のある方は是非お問い合わせください。
※「ユポ」は、株式会社ユポ・コーポレーションの登録商標です。
この記事を書いた人株式会社ユポ・コーポレーション
地球と人を大切にしていきたい。
当社はこれからも環境保全や環境負荷の削減を使命として社会に貢献していきます。