ポリプロピレンの長所と短所とは?基本や種類と合わせて解説
ポリプロピレンはプラスチック素材の1つであり、身近な製品に、幅広く使用されています。この記事では、ポリプロピレンの基本や歴史、長所・短所、加工方法、種類などを解説しています。自社でポリプロピレンを使用する予定があり、知識を得たいと考えている人は参考にしてください。

ポリプロピレンの基本
ポリプロピレン(PP)はプラスチックの一種で、プロピレンという物質を重合して作られます。プロピレンはおもに、石油留分の一種であるナフサを高温で分解する、ナフサクラッキングにより作られています。
ポリプロピレンは略称としてPPと呼ばれるケースが多く、プラスチックのなかでポリエチレンとトップを争う生産量です。軽くて加工性が高いため、身の回りにあるさまざまな製品に使用されています。製法も複数あり、大量生産に適しています。
ポリプロピレン誕生の歴史
ポリプロピレンが誕生したのは、1950年代初頭です。ドイツ人化学者であるカール・チーグラーが、ポリエチレンを製造するうえで必要な触媒を発見したことが、きっかけとなっています。
しかし、その触媒は、ポリプロピレンの製造には適さなかったため、1954年にジュリオ・ナッタとカール・レーンが改良し、ポリプロピレンの製造に適したチーグラー・ナッタ触媒を開発しました。
その後、1957年にイタリアのモンテカチーニ社によってポリプロピレンの商業生産が始まりました。カール・チーグラーとジュリオ・ナッタは、その功績をたたえられ、1963年にノーベル化学賞を受賞しました。
ポリプロピレンの5つの長所
ポリプロピレンには、どのような長所があるのでしょうか。おもな5つの長所を解説します。
1.プラスチック素材のなかでも軽い
ポリプロピレンの比重は0.90~0.91で、プラスチックのなかでもトップクラスに軽い素材です。ポリプロピレンは水に浮く軽い物質で、製品を軽量化しやすいといえます。他のプラスチック素材では、もっとも利用されるポリエチレン(PE)の比重は0.91~0.95です。
また、合成繊維として衣類に利用されナイロンとも呼ばれるポリアミド(PA)の比重は1.2、ペットボトルやたまごのパックなどに利用される、ポリエチレンテレフタラート(PET)の比重は1.35となっています。
2.安価なプラスチックのなかでは強度に優れる
ポリプロピレンは、安価なプラスチックのなかでは剛性が高い素材です。剛性は、外からの負荷での変形しにくさを表します。引張強度や衝撃強度、圧縮強度に加えて、耐摩耗性にも優れているのがメリットです。
3.ポリエチレンよりも熱に強い
ポリプロピレンは、ポリエチレンと比べて熱に強い素材として知られています。ポリエチレンの融点が130℃であるのに対して、ポリプロピレンの融点は165℃です。熱に強く電子レンジでの加熱にも耐えられるため、食品用タッパーにも使用されています。ただし、難燃性はなく燃えやすいため注意が必要です。
4.ヒンジ特性がある
ポリプロピレンは、プラスチック素材のなかでも繰り返しの折り曲げに対して強い素材です。繰り返しの折り曲げに強い性質を、ヒンジ特性と呼びます。ヒンジとは、日本語で蝶番のことです。ヒンジ特性を活かした製品としては、ペットボトル飲料の「落ちないキャップ」があります。
他にもヒンジ特性を活かして、化粧品やシャンプーなど、フタ部分が取れずに折り曲げてフタをする製品に利用されています。
5.耐薬品性が高い
ポリプロピレンは、さまざまな薬品に触れた場合も、変形や劣化がしにくい点が魅力です。酸性やアルカリ性の液体、エンジンオイルに使用される鉱物油など、さまざまな薬品に晒される製品に使用されます。例えば、薬品の容器や注射器といった、医療機器にも使用されています。
ポリプロピレンの3つの短所
ポリプロピレンには長所だけでなく、短所も存在します。おもな3つの短所を解説します。
1.耐候性(紫外線耐性)が低い
ポリプロピレンは長期間紫外線や日光を浴び続けると、劣化が進行します。劣化が進行すると、色が白っぽくなり、強度の低下や表面の割れが発生します。屋外で長期間使用したい場合、耐紫外線剤を添加する、表面に紫外線吸収性のある塗料や樹脂をコーティングするなどの対応が必要です。
2.接着が難しい
ポリプロピレンは化学的に安定し、水をはじきやすいため、一般に接着性が悪い難接着材料といわれます。接着性の悪い材料の例としては、フライパンのコーティングに使用されているフッ素系のプラスチックが挙げられます。接着加工したい場合には、ポリプロピレンに対応した接着剤を使用するとよいでしょう。
コロナ処理をはじめとした表面処理も、接着性の改善に有効です。近年は、自動車のマルチマテリアル化の動きが進み、金属とPPを高い強度で接着する製品や技術が登場しています。
3.印刷しにくい
ポリプロピレンは表面の自由エネルギーが低く、そのままでは印刷に適しません。表面自由エネルギーは表面張力とも呼ばれ、低いほど塗布や印刷、接着などの表面加工が難しくなります。そのため、ケースバイケースで、適切な印刷方法やインキなどを選択することが必要です。
インキメーカー各社から、ポリプロピレンに対応したプラスチック用印刷インキが発売されています。またコロナ処理のような表面処理を行うことで、インキとの密着性を高められます。
ポリプロピレンの4つの加工方法
ポリプロピレンには、複数の加工方法が存在します。4つの加工方法を、それぞれ解説します。
1.射出成形
射出成形とは、プラスチックを高温で溶かし、金型に流し込み成形する加工方法です。ポリプロピレンの射出成形では、成形温度200~300℃、成形圧力800~1200MPaが標準的な条件といわれています。溶けたプラスチックを注射するように金型に流し込むため、射出(英語でインジェクション)成形と呼ばれます。
射出成形では金型の形に応じた、さまざまな形のプラスチック製品を作成できます。プラスチック製品を連続して生産できる、高い生産性が強みです。身近な例としては、PETボトルのキャップ、はさみの取っ手、プランター、バケツ、ビール用のコンテナなどが、射出成形によって作られています。
2.押出成形
押出成形とは、プラスチックを高温で溶かし、ダイスから特定形状に押し出して成形する加工方法です。シートやフィルム、プラスチック板、角材や棒、パイプなど、一定の断面形状で長さのある製品の成形に適しています。押し出したプラスチックが冷え固まったあとに、一定の長さに切断するため、同じ断面形状が続くものを作ることが可能です。
押出成形で作られている製品の例は、フィルム、チューブ、プラスチックウッドデッキ、LANケーブルなどのカバーに使用されるモール材です。一般的に、押し出したプラスチックを大気中や水中で冷やしていくため、適切な冷却条件になるように設計する必要があります。
3.中空成形
中空成形とは、プラスチックを金型に入れ、次いで空気を吹き込んで膨らませ、金型形状に成形する加工方法です。中空成形はプラスチックを金型に入れる手法によりさらに分類されます。具体的には、溶けたプラスチックを筒状に流し込むダイレクトブロー成形や、予め試験管状に成型された「プリフォーム」を用いるストレッチブロー成形などです。
中空成形は、吹込成形やブロー成形とも呼ばれ、ボトルのような空洞がある製品を大量に作る際に適した方法です。灯油やガソリンのタンク、日用品や調味料のボトル、または飲料用のペットボトルなど、さまざまな製品が作られています。金型に触れない内側のコントロールが難しい他、重力で製品の下部が上部より厚くなりがちであることに、注意が必要です。
4.フィルム成形
フィルム成形はポリプロピレンを原料として、食品用や産業用など幅広いフィルムを作る技術です。なかでも、もっとも多く使用される食品用は、品質の維持や衛生的な保存を可能にしています。フィルムには「CPPフィルム(無延伸ポリプロピレンフィルム)」と「OPPフィルム(延伸ポリプロピレンフィルム)」の2種類があります。
CPPはポリプロピレンフィルムの1種で、成膜後に延伸せずそのまま使用するものです。OPPと比較して柔らかく、引っ張ると伸びやすく、裂けにくいという特長があります。また、耐寒性がありヒートシール性(熱接着性)がよく、袋にした際に裂けにくいため、雑貨品の軽包装や繊維包装、容器の内袋などに広く使用されています。
OPPもポリプロピレンフィルムの1種で、成膜後に長さ方向や幅方向に引っ張って製造するものです。CPPに比べ、耐熱性、防湿性、引張強度、透明度、剛度に優れます。また、CPPより気体を通しにくく、雑貨、繊維包装の溶断シール袋など安価な袋に広く使用されています。
ポリプロピレンフィルム共通の特長は、軽量で耐薬品性や耐油性が高く、比較的安価なことです。
ポリプロピレンの3つの種類とおもな用途
ポリプロピレンには複数の種類と幅広い用途があります。3つの種類と、おもな用途を解説します。
1.ホモポリマー
ホモポリマーは、プロピレンのみを重合させたポリプロピレンです。ポリプロピレンのなかでは結晶性が高く、透明性や外部からの力によって変形しにくい剛性、高熱にも耐えられる耐熱性に優れています。また、比較的安価で成形しやすいといわれています。
ただし、低温衝撃強度が低く、寒い場所では製品が脆くなるため、寒冷地で使用する製品には適しません。おもな用途は、食品用トレーや食品包装フィルム、釣り糸やテニスラケットのガットに使用されるモノフィラメント、テープ、カップやトレーの小型容器、不織布やロープなどです。
2.ランダムコポリマー
ランダムコポリマーはプロピレンを主体とし、他のオレフィンを少量混ぜて共重合させたポリプロピレンです。オレフィンとしてはエチレン、1-ブテンなどが挙げられます。プロピレン分子の間にオレフィン分子がランダムに繋がることで、ポリプロピレンの結晶化を妨いでいます。結晶は光の散乱の原因となり透明性を下げるため、結晶化させなければ透明性が高くなります。
ランダムコポリマーの特長は、融点が低く比較的柔らかいこと、また常温では、ホモポリマーよりやや割れにくいことです。おもな用途は、衣装ケースの本体部分や注射器の本体部分、食品を包装する際のフィルム、洗剤や食品などのボトル容器で、ポリプロピレンのなかでも透明性が求められる製品に適しています。
3.ブロックコポリマー
ブロックコポリマーは、ポリプロピレンホモポリマーのマトリックス中に、他の重合体のドメイン(一般には、ゴムのような性質を持つエチレン-プロピレン共重合体など)が存在するように、共重合されたポリプロピレンです。ポリプロピレンホモポリマーの海に、エチレン・プロピレン共重合体の島が浮いているようなイメージを持つとわかりやすいでしょう。
ブロックコポリマーはゴムのようなエチレン・プロピレン共重合体が分散しているため、耐衝撃性が高くなります。ホモポリマーの衝撃や低温に弱い短所を解消したものと言えるでしょう。おもな用途は、洗濯機・冷蔵庫などの家電製品の部品や、コンテナやバンパー、バッテリーケースなどの自動車部品、冷凍食品用トレーなどです。
まとめ
ポリプロピレンは身近な製品に使用されているプラスチック素材の1つで、ポリエチレンと並んで豊富な生産量を誇ります。軽い物質でありながら強度に優れ、同様に生産量の多いポリエチレンと比較して熱に強いのが特長です。耐候性に欠け接着が難しく、印刷しにくいというデメリットはあるものの、長所の多い素材といえるでしょう。
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この記事を書いた人株式会社ユポ・コーポレーション
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