圧電素子(ピエゾ素子)とは?構造や用途、原理、ピエゾ効果について解説
圧電素子は、圧力に応じた電気分極を電気信号として取り出せる素材で、センサーや発火装置として活用されています。また、アクチュエーターとしても利用可能です。本稿では、圧電素子の構造や原理、活用方法について解説します。

圧電効果(ピエゾ効果)とは圧力で電圧が生じる現象
圧電素子に加圧すると、その圧力で電圧が生じます。これを圧電効果、またはピエゾ効果といいます。ピエゾという言葉は古代ギリシャ語を由来としており、「押す」という意味の「ピエゾ」からきています。
圧電効果は、ピエール・キュリーとその兄ジャック・キュリーにより発見されました。ピエールは放射線の研究で著名なマリー・キュリーの夫で、ともにノーベル物理学賞を受賞しています。
圧電効果の原理
固体の結晶格子内部に配置された陽イオンと陰イオンは、通常は3次元的に対称な位置に配置され全体的に電子の偏りがありません。しかし、圧力が加わり結晶格子が歪むと、この対称性が崩れいずれかの軸に電子が偏り、電気分極が発生するのです。
圧電効果で得られるエネルギーは大きくはないものの、圧力を電気に直接変換できることから、センサーや加圧発電に応用されているのです。
逆圧電効果(逆ピエゾ効果)とは電圧をかけて振動させる現象
圧電効果を発揮する圧電素子は、逆に電圧をかけることで伸縮します。これは逆圧電効果、または逆ピエゾ効果と呼ばれる現象です。逆圧電効果は電子回路のクロック信号に用いられており、エレクトロニクス業界では欠かせない存在です。
逆圧電効果は精度の高いアクチュエーターとして利用できますが、非常に薄いためアクチュエーターとしての作動幅を確保するには複数の圧電素子を合体積層させる必要があります。
高精度のセンサーとしての働きも、逆圧電効果の産物です。
圧電素子(ピエゾ素子)とは電気・力学の関係を応用した受動素子
圧電素子は、石英、水晶などの誘電体で生じる圧電効果や逆圧電効果を利用して、微小な動作制御や振動検知をする受動素子です。
単純な構造ながら、「振動を検知する」「細かな駆動や振動を起こす」といった性質が、さまざまな用途に役立っています。
圧電素子の構造
圧電素子の基本構造は、圧電材料を電極で挟んだごく単純なものです。
力が加わると、圧電材料の原子構造内部にあるプラスイオンとマイナスイオンの位置が動き、電荷が偏る電気分極が生じます。これにより電圧が発生するのです。
電圧を加えるだけで、圧電素子を動かすことも可能です。
原理的に丈夫で小型化も簡単なため、精密機械の部品として優れています。
圧電素子のメリット
圧電素子のメリットは、他の微小動作機構と比べても小型の素子にできること、センサーとして繊細な検知が可能なことです。
圧電効果の利用例として、身近なものではガスコンロやライターの着火機構があります。
また、逆圧電効果を活用すると、微細な制御ができるアクチュエーターとして使用可能です。応答が早い、繊細なコントロールが可能、対荷重が大きいなどのメリットがあります。
センサー系としては、微細な動きを電圧に変換して数値化できる点が特長です。
圧電性を持つ物質
前述のとおり、圧電効果は、圧電材料の原子構造内に陽陰双方のイオンが封入されており、極性を持つことからもたらされます。この条件を満たす物質は多くはありません。
ここでは、圧電性を持つ物質を解説します。
圧電単結晶
圧電単結晶として圧電性を持つのは、石英やトルマリン、ロッシェル塩などの天然の単結晶物質です。単結晶とは、結晶内のどの場所でも原子の配列が同じ向きである結晶を指します。
圧電単結晶は天然に単体として産出するため、入手が容易である点がメリットです。
ただし、圧電効果は比較的小さいため、得られる電圧が大きくないことに注意が必要です。
圧電セラミックス
圧電セラミックスは、圧電単結晶とは異なり自然界には存在しません。
チタン酸バリウムや、ジルコン酸チタン酸鉛などの多結晶の強誘電体セラミックに対して高い電圧を加え、電荷の偏りを一方向に揃える処理により圧電セラミックスが製造できます。
圧電セラミックスは加圧時に圧電単結晶より大きな電圧を生じ、また電圧をかけた際の変位も大きいのが特徴です。
圧電薄膜
圧電素子の中で、厚さが数μm程度のものを薄膜ピエゾ、または圧電薄膜と呼びます。
圧電材料として酸化鉛やジルコン酸チタン酸鉛などを使用し、ゾルゲル法やスパッタ法などの方法で成膜化したものです。
圧電薄膜はデバイスを小型化し、集積化や高精度化、低消費電力化を可能にします。
圧電性能が高く、圧電素子の主役といえる材料です。
ユポの特長についてはこちら
圧電素子(ピエゾ素子)の使用用途
圧電素子には発火装置、各種センサーに加え、アクチュエーターとしての用途や発電効果を利用した用途もあります。
ここからは、圧電素子のそれぞれの使用用途について解説します。
発火装置としての用途
加圧すると電圧が生じる特性を利用し、圧電素子は発火装置として用いられています。
ライターのスイッチやコンロのツマミに圧電素子を接続し、人が押したり回したりして圧力がかかると電圧が発生、火花が散って着火するのです。
電子ライターで使用される圧電素子は、破損しない限り半永久的に使用できます。ガスコンロの着火装置も同様です。
各種センサーとしての用途
圧電素子はかかった圧力を検知し、電圧として出力します。このため圧力や振動、加速度のセンサーとして活用されています。
圧電素子によるセンサーは以下のような特徴を持つため、動的な圧力変化を測るセンサーとして有効です。
・移動速度が速い
・測定可能範囲が広い
・耐環境性能や耐久性が高い
ただし、静的センサーとしては向いておらず、また加速度を検知してしまうという欠点もあります。
アクチュエーターとしての用途
圧電素子の電気を通じ伸縮する性質を活かして、アクチュエーターとしても用いられます。圧電素子のアクチュエーターには以下の利点があります。
・摺動部分がない
・誤差が生じにくい
・半永久的に使える
・消費電力が少ない
・小型で高速
その特性から、HDD内部の位置決めや、デジタルカメラのCCDの駆動、インクジェットプリンターのインクを打ち出すマイクロポンプなどに使われています。
発電用途
圧電素子は、発電床での発電用途にも用いられています。発電床とは、人が歩いたときの振動を圧電素子が検知し、電流を生み出す仕組みです。
発電床は、直径3cmほどの圧電素子を床に敷き詰め、保護材をかぶせた構造になっています。人が上を歩くときに、圧電素子が圧力を受け発電します。
発電床はJR東日本で実証実験が行われている段階で、いまだ実用例はありませんが、手軽にクリーンなエネルギーを得られる点から期待されている手法です。
圧電性が付与された「ユポ」
圧電性を備えたフィルムがあることをご存じでしょうか。
ユポ・コーポレーションが開発したユポは、機能性の高い合成紙であると同時に圧電性を持つことから、圧電素子としても活用されています。
ユポは機能性の高い合成紙
合成紙であるユポは水に強くて破れにくく、耐油性や耐薬品性にも優れた合成紙です。表面はなめらかで軽く、紙とフィルムの長所を併せ持ちます。
ポリプロピレンと無機充填剤を主原材料とし、基層を上下の表層で挟みこむ三層構造になっています。
ユポ・コーポレーションはこのユポを50年にわたり作り続け、国内売上No.1※ のブランドへと成長させました。
※...合成紙市場における販売量(t)、(参考)矢野経済研究所「2022年版 特殊紙市場の展望と戦略」
ユポの圧電性と活用
ユポにコロナ放電を照射することで電荷が注入され、保存された電荷が分極を形成するのです。これが、ユポが圧電性を持つ仕組みです。
ユポは表層や基層にミクロボイドと呼ばれる小さな孔が無数に空いており、この孔が光沢や軽量化に寄与しています。ミクロボイドの形状・配置を最適化し、特殊な帯電工程で加工された圧電性ユポは、電子アコースティックギターのセンサーとして採用され、従来のセンサーでは出せない微細な音の検出に成功しました。
まとめ
圧電素子(ピエゾ素子)とは何か、その特徴や使途について説明しました。圧電素子はセンサーやアクチュエーターとして、さらに発電媒体として既にさまざまな分野で欠かせない素材です。
さらに、ユポのような意外な素材から生まれた圧電素子が、今後さまざまな技術応用を生み出すことが期待されています。
ユポについて、興味のある方はぜひこちらをご覧ください。
※「ユポ」は、株式会社ユポ・コーポレーションの登録商標です。
この記事を書いた人株式会社ユポ・コーポレーション
地球と人を大切にしていきたい。
当社はこれからも環境保全や環境負荷の削減を使命として社会に貢献していきます。