BS5609とは?必要な理由・認証取得方法を解説
BS5609は、主に海上輸送でのコンテナや貨物に貼付される物質情報を記載したラベルと、その印刷の規格です。化学物質の海上輸送における安全性の確保や、漂流、漂着しても読めるほどのラベル情報の保存性を追及する規格でもあります。BS5609について、必要な理由や取得方法、評価基準を解説します。

BS5609とは
BS5609は、海上輸送用ラベルの耐久性についての規格であり、英国規格協会で定められたものです。
危険物の海上輸送では、国際海上危険物規程、いわゆるIMDGコードに基づき、コンテナの梱包に内容物の情報を記載したラベルの貼付が義務付けられています。
この貼付ラベルは、海上輸送中の海水や日射など過酷な環境への暴露に耐え、印字情報が判別できる状態を保てなければなりません。その要件を満たすために定められた規格がBS5609であり、同規格に適合したものがBS5609認定ラベルです。
BS5609が必要な理由
海上輸送では、事故や貨物の落下で海上に荷物が流出し漂着することがあります。漂着先で内容物を把握できるように、貨物に貼付されるラベルには、一定期間剥がれずかつ記載内容が判別できる耐久性が求められます。
海上輸送では化学薬品などの危険物を取り扱うケースも多く、内容物の情報は危険を避けるうえでも必須です。
BS5609では、認証を取得したラベルとプリンターの組み合わせのみが使用可能であり、たとえばセクションを満たしたラベルとプリンターを使用していても、その組み合わせで認証を取得してないと、BS5609適合とはみなされません。
BS5609はIMDG CodeとGHSにおける耐久性の証明
BS5609は、国際海上危険物規定(IMDG Code)と、国連が2003年に勧告した化学品の分類および表示に関する世界調和システム(GHS)の両者が定める耐久性の証明です。このIMDG CodeとGHSについて解説します。
IMDG Code
IMDG Codeは国際海上危険物規程とも呼ばれ、国際海事機関(IMO)に規定されているものです。
背景には「海上における人命の安全を確保する」との理念のもと採択されたSOLAS条約(国際海上人命安全条約)が存在します。この条約の附属書で、海上輸送における「危険物」が定義されています。
IMOは、この条約の理念のもと、危険物の包装、容器、積載方法をIMGD Codeとして定めました。
GHS
GHSは、"The Globally Harmonized System of Classification and Labelling of Chemicals"の略称です。2003年7月、国際連合で勧告として採択されました。
各国で異なる化学物質の表示や取り扱い情報について、国際的に調和のとれた分類、表示方法が必要という認識から生まれた規格です。
GHSにより化学物質の安全な製造、使用、輸送、処理および廃棄が可能となり、貿易の安全性が高まっています。多くの国でGHSの導入が進んでいます。GHSに基づいて表示されたラベル情報によれば、漂着先を問わずに内容の把握が容易になります。
BS5609認証の取得方法・評価基準
BS5609には4つの認証セクションがあり、試験を要するものはセクション2とセクション3です。セクション2では基材としてのラベルの耐久性、セクション3では印刷文字や図柄の環境暴露下での可読性が評価されます。両方の認証を取得しなければBS5609認証は取得できません。
セクション2の認証を取得する方法|ラベルの素材
セクション2では、劣化試験後のラベルの粘着性、寸法安定性、表面の退色性が評価されます。ラベル基材及び粘着剤が試験対象です。
海水中に3ケ月放置される海水浸漬試験をはじめとして、常温常湿時、人口太陽暴露、温湿度サイクル後の条件下での剥離試験が実施されます。さらにラベルの寸法安定性試験や、表面の色彩堅牢度測定も行われ、ラベルが長期漂流後も剥がれないこと、過酷な環境を経ても可読性を保てることが条件です。
セクション3の認証を取得する方法|印刷パフォーマンス
セクション3では、ラベルの印字耐久性が評価されます。印字をするプリンター及びインキ、トナーの性能が対象です。
セクション2の適合ラベルに印字したサンプルを使い、印字の定着力や耐摩耗性、色彩の安定性を評価します。
テープ試験では、規定のテープを印字上に貼付し剥がした後の印字の残存度、色彩堅牢度が評価の対象です。耐摩耗試験では、砂と塩水の混合物による規定回数の摩耗後の印字の色彩及び可読性が評価されます。人口太陽暴露試験では、セクション2と同様の人工太陽光曝露後の色彩堅牢性が試されます。
取得プロセス
ラベルにおいてBS5609を取得するには、国際標準化機構(ISO)の認証を受けた第三者機関の認証が必要です。
例えば第三者機関のSmithersは、ラベル素材と印刷されたラベルの印字や図柄について、セクション2及び3のテストを実施しています。認証には両方のセクションでの合格が必要です。合格後は認証手続きの適切性を確認したうえでラベル製品が認証され、認証文書が発行されます。
ISOの認証を受けた第三者機関の証明書と試験報告書は、国際的に受け入れられるものです。
BS5609認証ラベルの印刷方法
BS5609認証ラベルは、セクション2を満たすラベルに、セクション3を満たすプリンターでの印刷が求められます。
ただし、認証は特定のラベルとプリンターの組み合わせにおいて認められる点に注意してください。
認証を受けたラベル、プリンターを任意に組み合わせないようにしましょう。ラベル、プリンターそれぞれが認証を得たものであっても、BS5609に適合するとはいえません。
BS5609の認証に対応するラベル向けユポが存在
ユポ・コーポレーションの合成紙「ユポ」は、合成紙として耐久性やインキ耐水密着性をもちます。そして、ユポにはBS5609の認証に対応した商品があります。
粘着ラベル向けの「ユポ SGM80」はセクション2の認証を取得しています。さらに、株式会社沖データのプリンターであるPLAVI Pro1050/Pro1040、そして日本エレクトロニクス工業株式会社のJP621-LCとの組み合わせにおいて、BS5609のセクション3の認証を獲得しました。
BS5609の基準は厳しく対応基材は少ない
BS5609の認証基準に対応した基材は決して多くはありません。BS5609は海上輸送の安全に関わる規格であり、第三者機関の審査基準が非常に厳しいためです。
認証ラベルの印刷にはセクションを通過した基材とプリンターの組み合わせでの印刷が求められ、プリンターだけが優秀でも認証は受けられません。基材とプリンター、インキとの適切な組み合わせが不可欠です。
合成紙「ユポ」
合成紙ユポは、表層、基層、表層の三層構造をもった合成紙です。基層による強度と、延伸工程で表層に無数のミクロボイドが生じさせることによる高い白色度をもちます。印刷や筆記適性、軽量などの特性を実現しています。
SGM80は、UVインクジェットやレーザープリンターなどの産業用デジタル印刷機への適性を大幅に向上したものです。前述のプリンターとの組み合わせでBS5609のセクション3認証を取得しており、印刷情報が消えにくいラベルとして活用が期待されます。
まとめ
BS5609は、化学物質の危険性を背景に、海上輸送における安全性の確保を目的として定められた規格です。BS5609認証のクリアは、基材である用紙と用いるプリンターやインキが共に高機能であることの証明でもあります。
ラベル印刷用途においても高い機能性を発揮するユポについて、詳しく知りたい方は是非こちらをご覧ください。
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※「ユポ」「ユポタック」は、株式会社ユポ・コーポレーションの登録商標です。
この記事を書いた人株式会社ユポ・コーポレーション
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